2026.05.16 COLUMN #017

大手24時間ジムに措置命令
「24時間使い放題」と口コミ風広告の落とし穴

大手24時間ジムを展開するフィットネス企業が、自社サービスの広告について、消費者庁から景品表示法違反で措置命令を受けました。「24時間使い放題」表示の優良誤認と、インフルエンサー投稿を口コミ風に掲載したステマ規制違反の二本立て。ステマ規制施行後わずか2件目の措置命令という大型事案です。フィットネス業界全体のSNS広告運用に直結する重要事例を解説します。

参考事例

消費者庁 令和6年8月8日付 措置命令

対象事業者:大手24時間ジムを運営するフィットネス企業(社名は本コラムでは伏せます)

違反法令:景品表示法5条1号(優良誤認)及び3号(ステルスマーケティング告示)

命令根拠:景品表示法7条1項

※本件は裁判判決ではなく行政処分です。

事案の概要

本件の対象事業者は、24時間ジムを全国展開する大手フィットネス企業です。同社の24時間ジムでは、ジム機能に加え、セルフホワイトニング、セルフ脱毛、セルフネイル、セルフエステ、マッサージチェア、ゴルフ、ワークスペース、デスクバイクといった8つの付加サービスを提供していました。

同社は自社ウェブサイトやInstagram投稿等で「追加料金なしで全サービスも24時間使い放題!」「ボディメイクや美容ケアはもちろん、リラクゼーションやワーキングスペースも好きな時にご利用可能です!」等と表示。さらに、第三者に対価を提供してInstagramに投稿してもらい、それを「お客様の声」「絶賛の口コミ続々」等として自社サイトに掲載していました。

消費者庁は令和6年8月8日、これらの表示が景品表示法に違反するとして、同社に対し措置命令を行いました。

違反事業者24時間ジムを全国展開する大手フィットネス企業
違反内容①「24時間使い放題」表示の優良誤認(景表法5条1号)
違反内容②ステルスマーケティング告示違反(景表法5条3号)
命令日令和6年8月8日
公表日令和6年8月9日
位置づけステマ規制施行(令和5年10月1日)後、2件目の措置命令

違反内容①:優良誤認表示

表示と実際の乖離

同社は「24時間使い放題」「いつでも・好きな時に利用可能」と表示していましたが、実際には各サービスの利用可能時間は1日のうち限られていました

サービス1日に利用できる合計時間
セルフホワイトニング5時間
セルフ脱毛7時間
デスクバイク7時間40分
セルフネイル8時間20分
セルフエステ14時間40分
ゴルフ16時間

消費者庁は、「1日24時間のうち、いつでも又は好きな時に利用できるかのように示す表示」であったが、実際にはそうではなかったと認定。一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法5条1号(優良誤認)に該当するとしました。

違反内容②:ステルスマーケティング告示違反

同社は、Instagramのインフルエンサー(個人アカウント)に対価を提供して投稿を依頼。その投稿を、依頼によるものであることを明らかにせず、「お客様の声」「絶賛の口コミ続々」「SNSでも話題!」等の見出しの下で、あたかも一般消費者の自発的な感想であるかのように自社サイトに掲載していました。

消費者庁は、当該表示が「事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められない」「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難」と認定し、令和5年10月施行のステルスマーケティング告示違反に該当するとしました。

ステマ規制施行後、2件目の措置命令。

令和5年10月1日にステマ規制(ステルスマーケティング告示)が施行されてから、消費者庁による措置命令は本件で2件目です。フィットネス業界としては最初の事例であり、SNSマーケティングを行うすべての事業者にとって警告となる行政処分です。

命令の内容

RESULT

消費者庁は、同社に対し以下を命令:

① 違反である旨を一般消費者に周知徹底すること
② 再発防止策を講じて役員及び従業員に周知徹底すること
③ 今後、同様の表示を行わないこと

【column-008との関連】第8回コラム「コンビニジム事件」も、本件と同じ事業者グループが当事者でした。前回は不正競争防止法の訴訟で勝訴しましたが、今回は行政処分。同じ事業者が、対外的には法的に有利な判決を勝ち取る一方で、自社の広告運用では行政処分を受けるという対照的な構図です。「攻める法務」と「守る法務」のバランスがいかに重要かを示しています。

注意点:ジム経営者・トレーナーが学ぶべきこと

  1. 「24時間営業」と「24時間使い放題」は別物 店舗が24時間営業していても、個別サービスごとに利用可能時間が制限されている場合、「24時間使い放題」と表示すれば優良誤認になります。営業時間と各サービスの利用時間は別々に正確に表記する必要があります。「利用時間:◯時〜◯時」のように具体的な時間帯を明記しましょう。
  2. インフルエンサー投稿を「お客様の声」として転載するのはステマ違反 対価を提供して投稿してもらった内容を、依頼関係を明示せず転載すると、ステマ規制違反に該当します。「PR」「広告」「タイアップ」等の表示を明確に行うこと、あるいは「お客様の声」欄には対価関係のない真の利用者の声のみを掲載することが必要です。「※個人の感想です」という注記だけでは免責されません。
  3. 顧問弁護士がいても違反は起きる——SNS運用の現場が知らないと意味がない 報道によると、本件は当該事業者の顧問弁護士の監督外で行われた掲載と指摘されています。法務体制があっても、現場のSNS担当者・マーケティング担当者が景品表示法・ステマ規制を理解していなければ違反は防げません。広告ガイドラインの策定と、現場への教育・チェック体制の構築が不可欠です。
  4. パーソナルジムこそ要注意——「お客様の声」「ビフォーアフター」は典型的なリスク領域 パーソナルジムの広告では、お客様の感想やビフォーアフター写真が多用されます。これらを使う際は、(a)実在する顧客の真の感想であること、(b)アフィリエイト・インフルエンサー報酬関係がある場合は「PR」と明示すること、(c)誇大表現を避けること、を徹底しましょう。措置命令は公表されるため、ジムのブランド毀損リスクは極めて大きいです。

まとめ

  1. 「24時間使い放題」表示は実態と一致させる 各サービスの実際の利用可能時間を正確に表記し、誇大表現は避けましょう。
  2. SNSインフルエンサー投稿は「PR」明示が原則 対価関係がある投稿を「お客様の声」「口コミ」として転載するのはステマ違反です。
  3. 法務体制だけでは不十分。SNS運用現場への教育が必須 広告ガイドラインの策定、チェック体制、現場担当者の研修を整備しましょう。

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※ 本コラムは、消費者庁公表の措置命令文書(令和6年8月9日付)に基づき、一般的な情報提供を目的とするものであり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案では結論が異なる場合があります。具体的なご相談はBenFitまでお問い合わせください。