「コンビニ○○」はどこまで真似してよい?
chocoZAP「コンビニジム」事件から学ぶ
自社のサービス名と似た名前を大手に使われたら——。小規模FCの「コンビニフィットネス」が、chocoZAPの「コンビニジム」というキャッチコピーに対し約4.9億円の損害賠償を請求した事件を解説します。ジム名やブランド名の保護について、フィットネス業界で知っておくべき教訓が詰まった判例です。
東京地裁 民事29部 令和6年11月15日判決
令和5年(ワ)第70366号 損害賠償請求事件
原告:株式会社プロフィットジャパン(「コンビニフィットネス」FC事業者)
被告:RIZAP株式会社(chocoZAP運営)
事案の概要
原告は、低価格・小規模型のフィットネスクラブ「コンビニフィットネス」を全国でフランチャイズ展開していた事業者で、「コンビニフィットネス」「コンビニフィットネス(図形)」等の登録商標を保有していました。
被告RIZAPは、24時間ジム「chocoZAP」を全国展開する際、広告や看板で「コンビニジム」というキャッチコピーを使用していました。
原告は、「コンビニフィットネス」が周知・著名な商品等表示であり、「コンビニジム」はこれに類似し混同を生じさせるとして、不正競争防止法に基づき約4億8,700万円の損害賠償(ライセンス料相当損害+弁護士費用)を請求しました。
| 原告 | 株式会社プロフィットジャパン(「コンビニフィットネス」FC事業者) |
|---|---|
| 被告 | RIZAP株式会社(chocoZAP運営) |
| 原告の表示 | 「コンビニフィットネス」(登録商標あり) |
| 被告の表示 | 「コンビニジム」(広告・看板のキャッチコピー) |
| 請求額 | 約4億8,709万円+遅延損害金 |
| 法的根拠 | 不正競争防止法2条1項1号・2号、4条、5条3項 |
争点
争点1:「コンビニフィットネス」は「周知」「著名」な商品等表示か
不正競争防止法で保護されるには、原告の表示が「需要者の間に広く認識されている」こと(周知性)または「著名」であることが必要です。原告のFCがどの程度の規模・認知度を持っていたかが問われました。
争点2:「コンビニジム」は原告表示と類似し、混同のおそれがあるか
外観・称呼・観念の各要素から、「コンビニフィットネス」と「コンビニジム」が類似するか、取引の実情を踏まえて混同が生じ得るかが検討されました。
争点3:「コンビニジム」は説明的表示にすぎないのではないか
被告は「コンビニジム」は「コンビニのように便利なジム」という意味の説明的表示であり、特定の事業者の出所を示す表示ではないと主張しました。
裁判所の判断
原告の請求をすべて棄却(完全敗訴)。
「コンビニフィットネス」の周知性・著名性はいずれも否定されました。
裁判所が認定した理由
- 周知性が否定された——規模が「広く認識」には足りなかった 原告のFCは全国で延べ62店舗、会員数は延べ約1万9,000人にとどまっていました。全国の小規模型フィットネスクラブ約2,189店舗のうちごく一部に過ぎないとして、「需要者の間に広く認識されている」とまではいえないと判断されました。
- 表示の識別力が限定的と評価された 「コンビニフィットネス」も「コンビニジム」も、いずれも「コンビニのように便利なフィットネス施設/ジム」という説明的な意味合いを有しており、原告の表示自体の識別力(特定の事業者を示す力)が限定的であると評価されました。
- 不正競争行為の成立が否定された 周知性・著名性が認められない以上、混同惹起行為(不競法2条1項1号)にも著名表示冒用行為(同項2号)にも該当せず、損害賠償請求は棄却されました。
ポイント:「コンビニ+業態名」のような説明的なネーミングは、登録商標を持っていても、不正競争防止法上の保護を受けるハードルが高い。周知性の立証には、相当程度の市場シェアや認知度が必要とされます。
注意点:ジム経営者・トレーナーが学ぶべきこと
- 「説明的な名前」はそもそも保護されにくい 「コンビニフィットネス」「24時間ジム」「駅前パーソナル」のように、サービスの特徴をそのまま表す名前は、商標登録ができても不正競争防止法上の保護を受けるのが難しくなります。他社に類似の名前を使われたとき、「紛らわしい」と感じても法的に止められない可能性があるのです。ブランドを守りたいなら、説明的でない独自性の高いネーミングを選ぶことが重要です。
- 「周知性」のハードルは想像以上に高い 本件では、全国62店舗・会員約1万9,000人でも「広く認識されている」とは認められませんでした。小規模FCやローカルチェーンのブランド名は、不正競争防止法での保護を当てにするのではなく、商標権に基づく差止め・損害賠償(商標法)での対応を第一に検討すべきです。
- 他社のキャッチコピーを安易に真似するのもリスクがある 本件では被告RIZAPが勝訴しましたが、「結果的に勝った」からといって、他社の表示を安易に真似してよいわけではありません。相手の表示に十分な周知性があれば逆の結論もあり得ますし、商標権侵害として別ルートで訴えられる可能性もあります。キャッチコピーやサービス名を決める際は、事前に商標調査を行うのが鉄則です。
まとめ
- 「コンビニ○○」のような説明的ネーミングは、法的保護に限界がある 商標登録があっても、不正競争防止法上の「周知表示」として保護されるには、相当の市場シェア・認知度が必要です。
- ブランドを守りたいなら「独自性」が最大の武器 説明的でない、他社と混同されにくい名前を選ぶことが、長期的なブランド保護の出発点になります。
- 攻めるにも守るにも、商標調査と法的アドバイスが不可欠 新しいジム名・サービス名を決めるとき、また他社の表示が気になるときは、事前の商標調査と弁護士への相談をおすすめします。
※ 本コラムは、裁判例の紹介を目的とした一般的な情報提供であり、法的助言を構成するものではありません。個別の事案では結論が異なる場合があります。具体的なご相談はBenFitまでお問い合わせください。